2020年6月8日、エムスリー株式会社はアステラス製薬株式会社に対してエムスリーが提供するリモートディテーリングサービス「my MR君」を提供することを公表した。「my MR君」とは、日本の医師の9割にあたる28万人以上が登録する医療従事者専門サイト「m3.com」を活用し、MRの担当医師に対して自社医薬品の情報提供を実施するサービスである。
従来、エムスリーはグループ会社エムスリーマーケティングを通じて製薬会社のMRの情報活動をデジタル面で支援し、リアル面では製薬会社のMRが実施する併走形式であった。しかしながら、アステラス製薬は「my MR君」をアステラス製薬のMR100%が活用することを公表している。
このニュースを見た時、私は衝撃を受けた。なぜなら、製薬会社とエムスリーの立場が完全に逆転したからである。従来、製薬会社の医師に対する情報活動の主役はMR、脇役がMR君であったが、「my MR君」を機に情報活動の主役はMR君、脇役がMRに置き換わる。実情は分からないが、少なくともアステラス製薬の経営陣はそう判断したのである。
この結果、何が起きるか?それは、MRに求められる職務スキルの変化である。例えば、製薬会社の医師に対する情報活動をMRとMR君で比べると、ディティール回数はMRが200回/月に対してMR君は600回/月、担当医師はMRが100人に対してMR君は1,000人。
つまり、「my MR君」が導入された製薬会社のMRはディティール回数800回/月、担当医師1,100人分の仕事量を最低限こなす必要があるのだ。そうでなければ、従来の併走形式とは何も変わらない。
そして、エムスリーマーケティングは従来のMR君の仕事から「my MR君」を活用するMRのデジタル活用支援の仕事を担うのではないだろうか?そうでなければ、自社のプラットフォームである「m3.com」を顧客である製薬会社に開放する必要がない。
この大きな流れを考えると、製薬会社のMRの最終キャリアである営業所長、支店長のポストは減る可能性が高い。それならば、いち早くエムスリーグループへの転職を検討すべきであると私は考える。